記事並びに画像無断転載禁止 Arthur Hughes "Ophelia"(1901)
―オフェリア― アルチュール・ランボオ 星のまどろむ、静かな黒い流れを蒼白いオフェーリアが、長いヴェールをしとねに、大きな百合の花のように漂いゆく…――はるかな森からは、角笛の音が聞こえる。千年よりも昔から、悲しいオフェーリアは白い幻となり、はてしない黒い大河を流れてゆく千年よりも昔から、オフェーリアの切ない恋狂いは暮れゆくそよ風に、あのロマンスをつぶやく風は彼女の乳房にキスをして、波にゆらめくヴェールを花びらのように押し広げ、柳の枝は肩の上で震えながらすすり泣き、葦は夢見る広い額をのぞき込む。押し寄せられた睡蓮はため息をつき、眠れるハンの木の梢では、ときおり――目を覚まされた小鳥の巣から羽ばたきの音がして、――黄金の星座からは神秘な歌が聞こえてくるおお、蒼ざめたオフェーリア! 雪のように美しい!そうだ、おまえは少女のうちに川に流されて死んだのだ!――ノルウェーの高い山から吹きおろす風が辛い自由をひそひそ声でつぶやいたから、おまえの豊かな髪をもてあそぶ風が夢見る心に見知らぬざわめきをもたらしたから、樹のうめきと夜の吐息におまえの心が「本能」の歌を知ってしまったから、狂おしい海の激しいあえぎがおとなしくやさしいおまえの少女の胸を引き裂いたから、四月の朝、蒼ざめた麗しい騎士が、あの哀れな気狂いが、黙っておまえの膝に座ったから!天よ! 愛よ! 自由よ! なんという夢か、哀れな「狂女」よ!雪が火に溶けるように、おまえはあの人に溶けてしまった、大きな幻に言葉もつまり、――青い目は恐ろしい無限におびえていた! ――そして詩人は語るのだ、星の輝く夜になると摘んだ花を探しに、おまえが来ると、長いヴェールに横たわる蒼白いオフェーリアが大きな百合の花のように流れを漂うのを見たと。翻訳:門司邦雄「イリュミナスィオン」より引用